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Webマガジン連載

第5回町内・集落福祉全国サミットin淡路市

〔第2弾〕集落サミットに登壇された活動者のインタビューを紹介します
  • (左から)室津地区社協前会長 桂さん/ほっとほっと代表 中田さん/ちょっとたのまれ隊代表 太田さん
  • 〔室津地区社協〕平成9年から続く「食事会」。最年長は96歳の方が参加されています
  • 〔室津地区社協〕「むろづのみんなの夏祭り」。馴染みのある神社の境内でみんなの気持ちがひとつに!
  • 〔ほっとほっと〕拠点「つながり」での手芸サロン。みなさん、手仕事に夢中です!
  • 〔ほっとほっと〕拠点「つながり」での男性サロン。こちらでは、みなさん麻雀に夢中です!
  • 〔ほっとほっと〕拠点「つながり」での餅つき。大人から子どもへ受け継がれる伝統がここにあります。
  • 〔ほっとほっと〕拠点「つながり」に集まる地域のみなさん
  • 〔ちょっとたのまれ隊〕買い物移送サービスを利用してショッピングを楽しんでおられます
  • 〔ちょっとたのまれ隊〕老人クラブの有志によるサロン「いどばた喫茶」。いい雰囲気に本音も出ます・・・
  • 〔ちょっとたのまれ隊〕老人クラブの有志で始まった「やぶからぼう体操」。市内に広がっています!

 
全国各地の集落で、住民・地域の自主的な支え合いや地域づくりの活動が生まれています。
こうした住民による取り組みを共有しようと、「第5回集落福祉全国サミット」(以下「集落サミット」)が11月25日~26日の2日間、淡路市で開催されました。
本ウェブマガジンの前号では、第5回集落サミットの実行委員長を務められた小南廣之さん(淡路市社会福祉協議会会長)のインタビューをご紹介しました。
本号では、その第2弾として、集落サミットの登壇者である活動者の方々に、活動にかける思いを取材させていただきましたのでご紹介します。
 

室津地区社会福祉協議会
 前会長 桂 孝弘さん(淡路市)
阪神・淡路大震災の翌年、会食会を開始したことを皮切りに、市町合併・小学校統廃合等により危惧される地域課題を、役員会を通じて話し合い地区社協の活動に位置づけてきました。地区社協が主催して、町内会等の全団体が参加協力する「むろづのみんなの夏まつり」は9回を数えています。
 
― 震災の翌年から会食会を始められたとのことですが、きっかけを教えてください。
当時、私は明石と淡路をつなぐ連絡船の船乗りをしていまして、地震発生のその瞬間はまさに船で震源地の上を走っていました。地元に着いて、被害の大きさにとてもショックを受けました。
私はそのとき地区社協の役員をしていましたので、妻の「家のことは何とかするから」の一言にも背中を押されたこともあって、避難所運営に関わるようになりました。
避難所では、多くのボランティアの方にお世話になりましたが、私だけではなく、被災者や地域住民も同じことを感じていた方がいました。特に、地域の女性たちからは、「お世話になったから自分たちも何かしたい」という声が出てきたんです。遠方に行って何かすることは難しいので、私たちが調整役になって地元でできることをみんなで考えました。
そこで、有志の女性たちでつくる「サークルすずめ」と民生委員、地区社協の三者で会食会をしようということが決まりまして、震災の翌年に開催することになりました。町内会や民生委員、PTAも協力をしてくれることになったんです。
 
― 参加される方たちの反応はどうでしたか。
 食事会には、たくさんの方が来られました。こういう場を待っておられたんだと実感しました。そこで、お年寄りが集まる機会をもっと増やそうと、平成9年から、年間5回の開催にしました。いまもそのペースで続けていて、最年長96歳の方をはじめ、30名ほどの方が参加されています。この他に敬老会や友愛訪問も続けています。
 
― 「むろづのみんなの夏まつり」には子どもがたくさん参加されるとお聴きしました。夏まつりのこともおきかせください。
 室津地区には、室津小学校がありましたが、平成20年に市から小学校や保育所の再編の説明がありました。他地区に新設してそこに統合するので、室津小は閉校になるということでした。
地域の子どもと大人とのつながりが薄くなる、地域から保育所や小学校が消えてしまってからでは遅い!という危機感がありました。地域の子どもの顔を見れる機会をつくろう、赤ちゃんからお年寄りまで交わって語り合い、楽しいひと時を過ごせる機会をつくりたい。そんな思いから、地区社協で話し合いを重ねて、平成21年7月に初めて地区社協として夏祭りを開催したんです。会場は、住民の心が一つになる伝統的な秋祭りの会場になっている神社の境内でしたので、地域の人には馴染みのある場所です。
昔から「室津は口が悪いし、手が早い」と言われてきましたが、市内で室津地区が一番最初に地区社協を設置しましたし、夏祭りは、「室津の住民が力を合わせたらこんなすごいことができるんや!」という誇りになっています。その後、保育所が閉所され、昨年度に室津小が閉校になりましたが、祭りに向けた力合わせの文化は続いています。いま思うと閉校の話が持ち上がったときから祭りをしていて、本当によかったと思います。
 
― 最後に、これからの抱負をおきかせください。
 こういう取り組みは、地域の子どもたち、若者たちに、同じ地域の生活者として伝えていくべきことだと思います。それと、地区社協の活動に市社協から助成をしてもらっていますが、その財源は共同募金ですので、自分たちの募金が地域に還元されていることを実感しています。
これからも、持続可能な地域づくりのために、この活動を続けていきたいと思います。
 

 
つながりボランティアグループほっとほっと
 代表 中田 嘉代子さん(淡路市)  
 「井戸端会議からはじめるご近所同士のつながりを再び」・・・という思いからつくられた「地域活動拠点 つながり」(以下「つながり」)。ここでは、地域の多様なボランティアグループによって、さまざまな催しが開催されています。
これらを通じて、つながった方々が、ご近所の関係の中で見守りも行われています。
 
―「つながり」での活動の内容や参加者の状況を教えてください。
 平成25年度に「つながり」がオープンして以来、いろいろなプログラムやイベントを開催しています。
たとえば、サロンは月曜日から金曜日まで、平日は毎日開催しています。だいたい10名くらいの方が来られて、好きな飲み物を飲んだり、手芸をしたりして過ごされています。それから地域の農家の方の持ち寄りで開催する朝市も週1回開催していますし、男性サロンでご用意している囲碁や将棋、マージャンも好評ですね。毎週1回、開催していまして10名ほどの方が参加されています。認知症の男性の方も参加されています。この他に、月1~2回の地域食堂や、放課後子ども教室との共催で夏祭りやもちつきも開催しています。
 
―朝市は、まさに“地産地消”ですね。「つながり」は平成25年度にオープンしたということですが、当時のいきさつを教えていただけますか。
 もともと私は、地区のいずみ会の役員をしていた関係で、地域の方に向けて食事会を開催していましたが、社協からの「サロンをしてみませんか」という打診をいただきまして、平成19年から地域の公民館で「サロンほっとほっと」を開催していました。ところが、その公民館が閉鎖になってしまいまして、代わりの会場が近くの集会所になったんですが、建物の2階、しかも階段しかなかったんです。サロンには高齢者の方が参加していましたから、2階に上がるのが大変で、だんだんと参加者が減ってしまいましてね・・・。長い期間、使える空き家を探したりしましたが、なかなか見つかりませんでした。一方で、住民の方からは、街中に気軽に寄れる場が減ったという声をたくさん耳にするようになりました。
そんな状況をききつけた地域の方が、「うちの空き店舗を使っていいよ」って言ってきてくれたんです。平成25年3月のことです。無償で貸していただけるとのことでしたので、本当にありがたかったです。改修が必要でしたので、県の助成金を使って、その年の12月に「つながり」が誕生しました。
 
―土日以外、ほぼ毎日、いろいろなプログラムをされていますが、運営されるボランティアグループの方々は、どのようにして企画や当日の運営をされているんですか。
 「つながり」の運営には、7つのボランティアグループが協力しながら運営しています。各団体5~6名ほどのメンバーです。例えば、サロンは7つのグループが毎日、持ち回りで担当しています。企画は月1回「つながりボランティア運営部会」を開いて、自分たちで企画して、分担を決めて運営をしています。
それと、サロンが終わった後には振り返りもしていまして、参加された方の声をひろって企画に活かしたり、気になる方のご自宅を専門機関の方と一緒に訪問したりするようにしています。
 
―拠点でのイベントだけでなく、気になる人の訪問までされているんですね。これだけいろいろなことをするには、専門機関のサポートも大きいように思いますが。
 そうですね。まず、社協のバックアップが大きいですね。「つながり」の運営を担う7つのグループも社協が募集してくれました。それと、毎月の運営部会に、社協のボランティアコーディネーターの方が参加していただけるのでとても助かっています。毎月広報も発行していますので、ボランティアだけではこれだけのことは難しいですね。あとは、夏祭りやもちつきなど大きなイベントの時には共同募金や歳末たすけあい等から助成をいただいています。社協のサポートはとても大きいです。
 それと、「つながり」の拠点自体の運営は、町内会や婦人会の地域の団体や民生委員、ケアマネや社協など、いろいろな団体で構成する協議会が担っていますので、福祉の専門職と協力し合える関係にあることも助かっています。
 
―最後に、これからの抱負をおきかせください。
 もしかしたらですが、私、この活動にかかわっていなかったら、家に閉じこもっていたかもしれません。いつの間にかサロンのボランティアをして、外出をするようなって、いろいろな人と知り合ったことが、何よりの元気のもと。はり合いになっているんですね。
 これからも、自分たちが楽しみながら活動を続けていきたいと思います。
 

 
下八木老人クラブちょっとたのまれ隊
 代表 太田 豊さん(養父市)
 養父市で広がりを見せている「やぶからぼう体操」。先駆的に取り組んできた下八木老人クラブでは、現在、毎日2か所で体操を続けています。体操がきっかけで交流の機会も増え、会の活動が活発になっています。一人暮らし高齢者の声から買い物移送サービス「ちょっとたのまれ隊」(以下「たのまれ隊」)を実施するほか、老人クラブでは「いどばた喫茶」も開催しています。
 
―「たのまれ隊」の活動と、そのきっかけについて教えてください。
 「たのまれ隊」では、2つの活動をしています。一つは車での買い物支援、もう一つはゴミ出しなどをするちょっとした生活のお手伝いです。買い物支援は、月2回、第2・4の木曜日に実施しています。10名の運転ボランティアが毎回2、3名のシフトを組んで、スーパーや郵便局、銀行、市役所などを回っています。利用される方からガソリン代として1回100円を払っていただいていて、現在は5名ほどの常連さんがいらっしゃいます。「たのまれ隊」は、老人クラブの有志が平成23年5月から始めました。それ以前に、「いどばた喫茶」というサロンを月2回、第2・4の水曜日に平成22年4月から有志のメンバーが続けています。サロンには一人暮らしの高齢者の方もいらっしゃいます。その方たちから「買い物に行きたいけどバスがとても不便」「ゴミ出しが大変」という声を聴いていました。老人クラブの会合でも同じような声が出たんです。そこで、有志で始めたのが「たのまれ隊」です。
 
―ふだんの集まりで出た声やつぶやきから「たのまれ隊」が生まれたんですね。サロンもされているということですが、それはどのようなきっかけからですか。
 サロンを立ち上げる前、平成20年に、市社協と地域包括支援センターは「やぶからぼう体操」という棒を使った体操をつくって普及を始めていました。私たちは両者が主催する「介護予防サポーター研修」に参加して、その体操を教えてもらって地元に持ち帰り、自分たちでもやってみようと提案したんです。「養父市生まれの体操」「身近な棒を使って気軽に始められる」ということもあって、やろうとなりまして、老人クラブの有志で体操を始めたんです。
 毎日、午前と午後で場所を変えて2回。老人クラブなどのイベントでも積極的にみんなで体操をしてきました。体操を始めてから8年。参加者も増え、介護予防の効果も現れていて、より自信と喜びが大きくなりました。「やぶからぼう体操」は、子どもから高齢者までが一緒に楽しめて、介護予防や異世代交流につながるとあって、幅広い世代に浸透しています。毎日放送の「ちちんぷいぷい」にも取り上げられたほどです(笑)。こうした活動を続けてきたことで、会員同士の交流は深まって、地域のみんなが集えるサロンをしようとなったのが「いどばた喫茶」です。
 
―まさに「継続は力なり」ですね。太田さんご自身は、どのようなきっかけで地域の活動にかかわることになったんでしょうか。
 実は、近所を“散歩”していたことから始まりました(笑)。私は現役時代、長年、単身赴任で県外にいましたが、退職を機に生活が地元に戻ったんです。ある日、近所を散歩していましたら、地元の人から「太田さん、戻ってきたんやな。今度、『ふれあい倶楽部』(高齢者等の交流拠点)でサロンをやるから役員やってくれへんか?」と声をかけられたんです。長いこと地元を離れていましたから、何かできることがあれば、と引き受けたんです。
それから、区長やまちづくり協議会の福祉部長を務めまして、昨年度からは老人クラブの会長もさせてもらっています。
 
―地域の重役を担っておられるんですね。ご苦労も多いかと思いますが、さきほどからお話をうかがっていますと、とても楽しそうにお話されているのが印象的なんですが・・・。
 はい、楽しんでいますね。活動をしていますと、いろいろな人に出会いますので、知恵や力をももらいます。「たのまれ隊」でも利用者の方に喜んでもらえると、自分もうれしいので、励みになっていますね。
 
―その気持ちがとても伝わってきます。最後に、これからの抱負をおきかせください。
 養父市には、もし、認知症になっても、これまで培ってきた地域のつながりの歴史があって、助け合う素地があります。ただ、課題は若い次の世代の確保なんです。同じ人だけが関わっていては広がらないし、増えません。共同募金も同じではないでしょうか。そのためには、協力者を広げていくことが大切だと思っています。ちょっとした集まりも、つながるきっかけになります。そのような機会をどんどんつくっていきたいと思います。一歩でも、半歩でも、前に進めたいですね。
 

 
 今回の取材で、3つのグループに共通していたのは、福祉の視点だけではなくて、集落ならではの強みをいかしながら、人と人のつながりやにぎわい、次世代のことといった、まちづくりの視点で活動をされていることです。その地域で暮らす住民目線とはこういうことだと気づかされました。また、3人の方に共通していたのは、リーダーだけが奮闘して引っ張っておられるのではなく、話し合いや力合わせを重ね続けて、みんなで活動を発展させておられることです。「協働」って、まさにこれだと思いました。楽しそうに語られる3人のお話を聴きながら、将来、私自身も、生き生きと地域で暮らしたい、と感じた取材でした。
 
取材・文 松本裕一
 
※「第5回町内・集落福祉全国サミットin淡路市」は、赤い羽根共同募金の助成を受けて開催されました。
 
〔室津地区社会福祉協議会〕
 淡路市社会福祉協議会 地域ささえあいセンターほくだん
  淡路市浅野南2-40 ℡(0799)-82-0922
〔つながりボランティアグループほっとほっと〕
 淡路市社会福祉協議会 地域ささえあいセンターいわや
  淡路市岩屋1514-18 ℡(0799)-72-0084
〔下八木老人クラブちょっとたのまれ隊〕
 養父市社会福祉協議会
  養父市八鹿町下網場320 ℡(079)662-0160
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